<そのころ>
98年のプレーオフへ向かう中、前2シーズンにシカゴを取り巻いていた無敵のオーラは、すでになかった。レギュラーシーズン終盤、ブルズはもう意志の力だけで勝つことは期待できない、疲れ切ったチームのように見えた。もしシカゴが8年で6度目のチャンピオンシップを獲得するつもりなら、一部のオブザーバーたちにはもはや不可能と思われた方法で、自分たちのゲームを高めねばならないだろう。
プレーオフの最初の2ラウンドで、シカゴはニュージャージー・ネッツとシャーロット・ホーネッツを1敗しただけで容易に退けた。けれども、インディアナ・ペイサーズと対戦したカンファレンス・ファイナルは、ゲーム7まで延長された。それは、ブルズが91年に初優勝してから、わずか2度目のことである。シカゴはシリーズ最終戦を88−83で勝ったが、その夜のいつまでも残るイメージは、最終ブザーの後にあった:勝利を祝うより、息を切らせ、前かがみになってショーツを引っ張るMJの姿。オッズメーカーはファイナルでジャズよりブルズを優勝候補にしたものの、ブルズ王朝は崩壊寸前だと誰もが感じざるを得なかった。
【MICHAEL'S MIRACLE】
その伝説に何かを付け加えることなど不可能に思われたが、マイケル・ジョーダンはいつもどおり見事な方法で、ブルズの王冠に6つ目の宝石をちりばめた。
BY PHIL TAYLOR
彼はミラクル・ワーカー。あまりにも優れていて現実には思えない劇的な離れ業を行う男。もしマイケル・ジョーダンが架空の人物なら、彼のキャリアがどこかの作家の空想の産物だったら、真に受けるには素晴らしすぎるものとして退けられただろう。しかし彼は実在する。ブルズの歓喜と、対戦相手の永遠に続く落胆にとって。
もちろん、他の選手たちもこの8年で6度目のシカゴの優勝に大きく貢献した。スコッティ・ピペンは、おそらくチームスポーツ史上最も偉大な脇役だ。フィル・ジャクソンはいつものように、ブルズを取り巻く絶え間ない馬鹿騒ぎを落ち着かせる影響力だった。デニス・ロドマンは、数々の不品行や奇矯さにもかかわらず、常に重要なリバウンドを囲い、一服の熱狂を注入するように見えた。そして、サポーティング・プレーヤーたちは -- トニー・クコッチ、ロン・ハーパー、ルーク・ロングリー、スティーブ・カー、スコット・バレル、その他 -- 不満を口にせず、高いプロ意識を持って、自分たちの役割を務めた。
だが、ジョーダンこそ、ブルズがもう1度チャンピオンである原動力だ。ユタ・ジャズに対するファイナルのゲーム6でチームを救った目覚ましいプレー、カール・マローンからボールを奪い、コートの反対サイドへドリブルし、5.2秒でジャンパーを放ち、シカゴに87−86の勝利ともう1つの優勝を与えたプレーは、ただ最新の適例に過ぎなかった。「彼はマイケル・ジョーダンだ。他に何が言える?」とジャクソンは言った。「彼は実在のヒーローだ」
しかしながら、彼らがファイナルに入ったとき、ブルズは知っていたはずがない -- ではないか? -- ジョーダンが自分たちのために、こんなお伽話のような期待に応えることを。彼らが確かに知っていたことのすべては、このジャズという、よく休養し、自信に満ち、レギュラーシーズンの対戦で2度ともブルズに勝ったおかげでホームコート・アドバンテージを有するチームとのファイナルが、恐らく今までで最も困難な相手に直面したファイナルになるということだ。
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